いもの

降水確率はちょうど半分。
傘を持っている人は疎らだ。その中を、傘を二本持って歩いている。
あんたはきっと持って来ないだろう。
降るかどうか分からないからとか、案外抜けてるところがあるから忘れるかもしれないとか。
ぐらつく空模様に俺がいちいち理由を探すのも馬鹿馬鹿しくなるくらい。雨が降るよりずっと確かなことだ。
待ち合わせ場所に着く頃にぽつりと一つ雫が当たって、俺は持ってる蝙蝠傘を一つ開いて空を見上げる背に差し出した。

「おはよう。はじめちゃん」
「おはよ」

その手が傘を受け取って、俺はもう一つの傘を開く。同時にぽつりぽつりと雨足が早くなる。

「龍馬ちゃん、いっつも傘忘れてくるね」
「だってはじめちゃんが持ってきてくれるから」

傘の下。くぐもった音の隙間を縫って、その声はよく通った。

「僕も忘れてきたらどーすんの」
「うーん。どうするって聞かれたらそりゃあ色々あるけど…」

出来もしない軽口にあんたは真面目に考えてる。

「だけど、僕はいつも濡れたっていいと思っているんだよ」

そうして俺がいちいち理由を探すのも馬鹿馬鹿しくなるようなことを平気で言う。

「……龍馬ちゃんが風邪引くと、僕が怒られるんだって」

隣の傘の下であんたは困ったように笑った。
同じ雨に濡れていてもきっと同じように笑ってくれるんだろう。
それは俺が傘を忘れるよりずっと確かなことだった。